レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「パーカー、叔母様の招待状が届いたら出席でお返事しておいてちょうだい」

「出席、なさるのですか? 途中で脱走――」

「しないわよっ」

 むくれた口調でエリザベスは叫ぶ。そして、

「行くと決めた時には行くんですからねっ」

 と指を振って宣言したのだった。

 ◆ ◆ ◆

 エリザベスがラティーマ大陸にわたったのは十歳の時だった。

 先代のマクマリー男爵、つまりエリザベスの父親が莫大な借金を作ってしまい王国の社交界から追放されてしまったのがその理由だった。

 土地を処分し、家財を売り払い――かろうじて残ったのは今エリザベスが住んでいるこの屋敷だけ。

 ラティーマ大陸で運良く発見した金鉱からの儲けを元手に、先代はエルネシア王国と大陸の間の貿易に乗りだし――それは危険な賭ではあったのだけれど、勝った。

 ラティーマ大陸で生産される香辛料は、エルネシア本土では気候の違いでうまく育てることができない。その香辛料の総取引量のうち四分の一はマクマリー商会が請け負っている。
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