レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
やっぱり、大きな声では言えない手段
 階段を上がって来る気配はなさそうだ。その場に身をひそめ、階下の会話に耳を傾ける。

「今夜は新しい賢者の石を使うそうだ」
「どうやって石を入手しているのだろうな?」

 どうも聞き覚えのある声のような気がする。エリザベスが用心深くさらに身を乗り出してみると下の様子を見ることができた。

(案外開けっぴろげなのね……)

 思わずそんな言葉が漏れる。こういう秘密結社的なところでは、顔を隠すものだと思っていたのに、皆顔を隠すどころかごく自然にふるまっている。
 服装から判断すれば、比較的裕福な者が多いようだ。一行が通り過ぎたのを見計らい、エリザベスは用心深く階段を下りた。

 下の階は狭い廊下にずらりと扉が並んでいた。

 一番奥の扉は他のものにくらべて少し立派だった。そこへ近づいて耳に扉を開けると、中で何人もの人々が談笑している気配がした。
 さすがに、この部屋に踏み込むつもりはなく、その隣の扉に手をかけてみる。想定内というべきか、鍵がかかっていた。

「……やっぱり、鍵がかかっているわね」

 苦笑してエリザベスは、その場を離れる。一つ一つ扉を確認してみるが、全て扉に鍵がかかっていた。
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