レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難

「魔力がもっとも高くなるのは、日付が変わる前後です。二十三時にもう一度来てください」

 エリザベスは二十三時、と心に刻む。今夜もう一度ここに来なければならなそうだ。

 ——あの窓から入れればいいけれど、と鍵を開けた窓の方へ視線を向ける。人の気配が消え失せたのを確認し、その窓から外へと滑り出た。

 頭痛がするから、早めに寝る。夕食も必要ない。
 そう宣言したエリザベスは、その夜早々と寝室に引き取った。そして昼間着ていた地味な服をもう一度引っ張り出す。

「さて、出かけましょうか」

 時間は二十一時。今から出れば二十二時には着くはず。こっそりと裏口から出てエリザベスは地下鉄の駅へと急いだ。

 地下鉄は終電だったが、帰りのことは気にしない。どうにかなるだろうと思っている。

 昼間脱出するのに使った窓の鍵は開けられたままだったから、そこから中に入り込む。

 リチャードが通されるのは、昼間男たちが入っていった屋根裏の直ぐ下の階にある部屋だろうとエリザベスは見当をつけていた。

 人の気配のない階段を急いで上り、該当の部屋の前に到着した。
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