レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
粗野な笑い声がして、男たちが別の路地へと駆けていった。彼らの足音が完全に聞こえなくなってから、パーカーはエリザベスをようやく解放した。
「……どうして」
ようやくそれだけが口から出てくる——かと思ったら、もう一度肩を掴まれて、激しく頭を揺さぶられた。
「何を考えているんですか、あなたは!」
「あう、それは」
「まあ、いいです。話は帰ってからにしましょう」
パーカーはエリザベスの腕をつかんだまま、彼女を引きずるようにして路地を抜ける。
何本か通りを抜けると、静かな公園の側に出た。道ばたに停められているのは、マクマリー家所有の自家用車だ。
「まったく……」
エリザベスを後部座席に押し込んで、パーカーは運転席に回った。
「今度という今度はあきれて物が言えませんよ。いったい何を考えているのです?」
エンジンをかけたパーカーは、エリザベスの方を見ようともしないまま車を発進させた。
「……何って……」
「あなたのやったことは犯罪ですよ。不法侵入です。もっと早くおとめすべきでした」
ハンドルを切るパーカーの手つきは荒々しいものだ。彼がいかに怒っているのかを如実に表している。
自分が悪いのもわかっているから、エリザベスは無言で背もたれに背中を預けた。
パーカーが来てくれなかったらどうなっていたのか考えたくもない。
「どうしても、取り戻したかったの。それだけじゃなくて——知りたかったのよ、わざわざあんなものを集めている理由が」
ポケットに入れていた懐中時計を取り出す。見つめたそれは古い品で、何度眺めてみても、どう考えても金銭的に価値のある物とは思えない。
それきり二人とも口をきかないまま夜の街を走り抜けた車は、屋敷の前へと到着した。パーカーはそのまま車を車庫へと乗り入れ、エリザベスの腕をつかんで車から引きずり出す。
「お嬢様」
玄関から邸内に入り、パーカーはエリザベスの腕をようやく離した。
「多少のことは目をつぶってまいりましたが、今回ばかりは我慢できません——レディ・メアリにご連絡させていただきます」
「待って、メアリ叔母様には——!」
「なりません」
丁寧に一礼して、パーカーはエリザベスを玄関ホールに残し、裏にある使用人用の階段へと向かって大股に歩み去る。
「わかってるわよ。誰が一番悪いのかなんて」
「……どうして」
ようやくそれだけが口から出てくる——かと思ったら、もう一度肩を掴まれて、激しく頭を揺さぶられた。
「何を考えているんですか、あなたは!」
「あう、それは」
「まあ、いいです。話は帰ってからにしましょう」
パーカーはエリザベスの腕をつかんだまま、彼女を引きずるようにして路地を抜ける。
何本か通りを抜けると、静かな公園の側に出た。道ばたに停められているのは、マクマリー家所有の自家用車だ。
「まったく……」
エリザベスを後部座席に押し込んで、パーカーは運転席に回った。
「今度という今度はあきれて物が言えませんよ。いったい何を考えているのです?」
エンジンをかけたパーカーは、エリザベスの方を見ようともしないまま車を発進させた。
「……何って……」
「あなたのやったことは犯罪ですよ。不法侵入です。もっと早くおとめすべきでした」
ハンドルを切るパーカーの手つきは荒々しいものだ。彼がいかに怒っているのかを如実に表している。
自分が悪いのもわかっているから、エリザベスは無言で背もたれに背中を預けた。
パーカーが来てくれなかったらどうなっていたのか考えたくもない。
「どうしても、取り戻したかったの。それだけじゃなくて——知りたかったのよ、わざわざあんなものを集めている理由が」
ポケットに入れていた懐中時計を取り出す。見つめたそれは古い品で、何度眺めてみても、どう考えても金銭的に価値のある物とは思えない。
それきり二人とも口をきかないまま夜の街を走り抜けた車は、屋敷の前へと到着した。パーカーはそのまま車を車庫へと乗り入れ、エリザベスの腕をつかんで車から引きずり出す。
「お嬢様」
玄関から邸内に入り、パーカーはエリザベスの腕をようやく離した。
「多少のことは目をつぶってまいりましたが、今回ばかりは我慢できません——レディ・メアリにご連絡させていただきます」
「待って、メアリ叔母様には——!」
「なりません」
丁寧に一礼して、パーカーはエリザベスを玄関ホールに残し、裏にある使用人用の階段へと向かって大股に歩み去る。
「わかってるわよ。誰が一番悪いのかなんて」