レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
今まで誰もいないと思っていた部屋に、鋭いダスティの声が響く。
その声と同時にわらわらと男たちが入ってくる。拳銃を握りしめたまま、エリザベスは彼らの方を睨み付けた 。
「銃を捨てた方がいいんじゃないかな? いくら君の腕がいいと言ってもこれだけの男たちを一度に相手にするのは分が悪いと思うけど」
「……そうね。でも、こういう状況でも諦めたら終わりだって……諦めなければ、なんとかなることも多いって知ってるもの」
父と渡ったラティーマ大陸。罪人が多数送り込まれたということもあって、荒くれ者が多かった。そんな中、生き残るのに常に気を張り詰めていたのである。
「——残念、と申し上げるより他はないでしょう。グレン様」
今までリチャードの介抱をしていたパーカーが立ち上がる。
「私、一応有能な執事ということになっておりますので。有能な執事は、常に主の身を守ることを考えるものでございますよ」
そう彼が宣言するのと同時に、ダスティの右手にある窓ガラスが割られ、カーテンがひらめいた。パーカーが背にしている扉も、勢いよく開かれる。
「警察だ!」
「全員、その場を動くな!」
飛び込んできた男たちは、皆黒く闇に紛れるような格好をしていた。
「ヘザー警部……トロワ刑事……」
見覚えのある二人に、エリザベスは呆然としてつぶやく。
「ご連絡をありがとうございました。踏み込むタイミングがなかなか難しくて、ですな」
慇懃な口調でヘザー警部が言った。
「お嬢様も何やらいろいろと暗躍なさっていたようですが、それについては改めてお話しすることにいたしましょう——全員逮捕だ!」
どうやらエリザベスがかぶっていたお嬢様の皮は、頭からべりべりとはがされてしまったようだ。
ヘザー警部が部下たちに命じると、ダスティの手下たちとの間に激しい戦闘が起こった。
エリザベスは呆然とそれを見つめている。ダスティの神経質な笑い声が響いた。
「無駄だよ! 僕を捕えようったって無駄なことさ!」
警官たちの包囲の手を素早くくぐり抜けてダスティは笑った。その声が部屋中に響き渡る。
「僕は捕まらない、絶対に——!」
その時だった。
鉛を金に変換するはずの機械が激しく振動する。
「なぜ!? 計算式は間違っていない! 今まで何度もうまくいっていたのに!」
その声と同時にわらわらと男たちが入ってくる。拳銃を握りしめたまま、エリザベスは彼らの方を睨み付けた 。
「銃を捨てた方がいいんじゃないかな? いくら君の腕がいいと言ってもこれだけの男たちを一度に相手にするのは分が悪いと思うけど」
「……そうね。でも、こういう状況でも諦めたら終わりだって……諦めなければ、なんとかなることも多いって知ってるもの」
父と渡ったラティーマ大陸。罪人が多数送り込まれたということもあって、荒くれ者が多かった。そんな中、生き残るのに常に気を張り詰めていたのである。
「——残念、と申し上げるより他はないでしょう。グレン様」
今までリチャードの介抱をしていたパーカーが立ち上がる。
「私、一応有能な執事ということになっておりますので。有能な執事は、常に主の身を守ることを考えるものでございますよ」
そう彼が宣言するのと同時に、ダスティの右手にある窓ガラスが割られ、カーテンがひらめいた。パーカーが背にしている扉も、勢いよく開かれる。
「警察だ!」
「全員、その場を動くな!」
飛び込んできた男たちは、皆黒く闇に紛れるような格好をしていた。
「ヘザー警部……トロワ刑事……」
見覚えのある二人に、エリザベスは呆然としてつぶやく。
「ご連絡をありがとうございました。踏み込むタイミングがなかなか難しくて、ですな」
慇懃な口調でヘザー警部が言った。
「お嬢様も何やらいろいろと暗躍なさっていたようですが、それについては改めてお話しすることにいたしましょう——全員逮捕だ!」
どうやらエリザベスがかぶっていたお嬢様の皮は、頭からべりべりとはがされてしまったようだ。
ヘザー警部が部下たちに命じると、ダスティの手下たちとの間に激しい戦闘が起こった。
エリザベスは呆然とそれを見つめている。ダスティの神経質な笑い声が響いた。
「無駄だよ! 僕を捕えようったって無駄なことさ!」
警官たちの包囲の手を素早くくぐり抜けてダスティは笑った。その声が部屋中に響き渡る。
「僕は捕まらない、絶対に——!」
その時だった。
鉛を金に変換するはずの機械が激しく振動する。
「なぜ!? 計算式は間違っていない! 今まで何度もうまくいっていたのに!」