レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「何であの時、お隣だなんて思ったのかしら」

 広い庭園を挟んでいるから、隣の家でガラスが割られたところでここまで響いてくるはずもないのに。

 警官達による現場の調査が終わった後は、屋根裏部屋に移動して盗まれた品がないかの確認を行う。

 昼食を挟み、午後半ば、ようやく全ての使用人達の事情聴取が終わった。

「リズお嬢さん、警察の人が呼んでますよー」

 パーカーに手伝わせて屋根裏部屋で盗品をチェックしていたエリザベスのところへマギーが呼びにくる。

 パーカーに後をまかせたエリザベスが図書室に入ると、二人の警官が待っていた。勧められる前にエリザベスは、ヘザー警部の前に腰を落とした。

「さっき掃除しながら思い出したのだけど、真夜中にガラスの割れる音が聞こえたの」

 エリザベスは、自分から口を切りだした。

「……何時頃でしょう?」

「さあ……零時は回っていたと思うけれど」

「音がしたけど、見には行かなかった……?」
「私の仕事ではないもの」

 肩をすくめてエリザベスは警部を見やる。
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