レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「誰も見に行く様子ないし、だったら家じゃないだろうって思ったのよね。だからそのまま寝たわ。家じゃないなら関係ないもの」

 それはまあそうでしょうねぇとかなんとか二人の警官は口の中でもごもごと言っていたが、昨夜屋敷にいた中であの音に気が付いたのはエリザベスだけだったようだ。

「お嬢様……屋根裏部屋から持ち出されたものですが、次の入荷を待っているところで、それほどの被害もなかったようです。目立つ被害としては、大陸からお持ち帰りになった像が二つ」

 手帳をめくりながら、パーカーは話を始めた。

「どの像よ?」
「剣を手にした聖女と、膝をついて祈る聖女の二点ですね」

「……それほど気に入ってたわけじゃないけど、無くなったと思うと腹がたつわね。もう少ししたら、売りに出すつもりだったのに」

 エリザベスは唇を尖らせた。

「懐中時計は見つかった?」

 その問には、否という答えをパーカーは返してきた。

「……ですって。懐中時計も追加しておいてくださる?」

 トロワ刑事はエリザベスの言葉を手帳に書き記した。
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