レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「大陸から持ち帰った像ですが……高価な品なのですか? 懐中時計はそれほどのものでもないというお話だったと思いますが」

「そうねえ、高いと言えば高いのかしら? 売るとすれば一体三十……いえ四十テランの値をつけると思うわ」

 四十テランといえば、独身男性なら一年楽に暮らせるほどの金額だ。エリザベスの属する階級から見れば、それほどでもないが、警官たちからすれば相当な金額だろう。

「それと懐中時計の方は、さっきも話したけど聖骨が入ってるってだけでたいした価値はないわ」

「その聖骨が本物か否か……?」

 トロイ刑事にエリザベスは肩をすくめてみせた。

「本物なら屋根裏に放り込んでおかないわ。教会に寄付するとか、欲しがるお金持ちに高値で売りつけるとか、何か考えるわ。これでも商売しているんですからね。あの時計は、父が買った品だから残しておいたの」

 屋根裏部屋に放り込んでおいたのは、エリザベスの感情的な問題だ。手元に置いておかなかったのは、ちょっとした感傷が理由だ。

 きちんと捜査することを約束して、警官達は引き上げていった。
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