レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
トランクの理由
命じられたことを片づけてパーカーが居間に入った時、エリザベスはだらしない格好でソファにひっくり返っていた。履いていたパンプスも、床の上にばらばらに放り出されている。
年頃の女性がそれはどうかというのは誰に聞いても同じ意見が出てくるのだろうが、パーカーにとっては見慣れた光景であった。大変遺憾なことではあるのだが。
顔は主の方に向けているにも関わらず、視線は絶妙な位置へそらすというエリザベスの帰国後に身につけた特技を駆使しながら、パーカーは冷静な声で指摘した。
「お嬢様……スカートがまくれています」
「あらやだっ」
飛び上がったエリザベスは改めてスカートの裾を引っ張り、ソファの上にあぐらをかいた。胸の前で腕を組んで、天井を睨みつけている。ものすごく機嫌が悪いのはそその表情だけでわかる。
主の機嫌を直すには何をすればいいのだろうと、口を挟むタイミングをパーカーがうかがっていると、エリザベスはむくれた口調で言った。
「……像はどうでもいいんだけど、時計だけは取り戻したいわ」
「大切な品なのですか?」
年頃の女性がそれはどうかというのは誰に聞いても同じ意見が出てくるのだろうが、パーカーにとっては見慣れた光景であった。大変遺憾なことではあるのだが。
顔は主の方に向けているにも関わらず、視線は絶妙な位置へそらすというエリザベスの帰国後に身につけた特技を駆使しながら、パーカーは冷静な声で指摘した。
「お嬢様……スカートがまくれています」
「あらやだっ」
飛び上がったエリザベスは改めてスカートの裾を引っ張り、ソファの上にあぐらをかいた。胸の前で腕を組んで、天井を睨みつけている。ものすごく機嫌が悪いのはそその表情だけでわかる。
主の機嫌を直すには何をすればいいのだろうと、口を挟むタイミングをパーカーがうかがっていると、エリザベスはむくれた口調で言った。
「……像はどうでもいいんだけど、時計だけは取り戻したいわ」
「大切な品なのですか?」