レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 その前はたしか、「ちょっとした散歩」で十キロ近く歩いてしまって朝食に間に合わなかったっけ。

 彼女の行動は今さらなのだが、使用人としては探さないわけにはいかないのだ。主としての自覚をもう少し持ってほしいものだと思わずにはいられない。

 きりきりとした痛みを感じたパーカーの手が、胸のポケットに伸びる。そこからガラス製の瓶を取り出すと、錠剤を三錠手のひらに転がした。口に放り込んだそれを、水もなしに飲み込んだところで、裏側の庭園に向かって歩き出す。

 何となくなのではあるが、主は屋敷の中にはいないような気がする。となると、街まで出て探さなければいけないわけで――彼女がこの屋敷に戻ってきてから三か月。彼の胃袋は、日々悪化の一途をたどっていた。

「パーカーさぁん! 見つかりましたよぅ!」

 それほどたたないうちに、マギーの大声が響き渡った。

目立たないようにと言ったのに、あんなに大声では目立つことこの上ないではないか。苦笑いでパーカーは食堂へと戻った。

 軽やかな仕草で朝食の席に着こうとするエリザベスには、悪びれた様子はまるでなかった。
 
 蜂蜜色の髪は肩から背中に流しているが、好き勝手な方向に飛び跳ねている。 深い緑色の瞳は、楽しげに輝いていて、頬は健康的な薔薇色に染まっていた。

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