レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 十七歳になった年に帰国したが、買い戻した田舎の領地に引っ込んでしまっていて、都にはなかなか出てこない。何でも田舎ならではの商売があるのだそうだ。

 先代が死去した時に、商売は手放すものだと思っていたパーカーは仰天させられたのだが、父の商売を継いだエリザベスは、それなりに上手く切り盛りしているらしい。

 らしいというのは、パーカーの耳に入ってくる噂話の範疇でしかないからで、実のところはどうなのかよくわからない。

 貴族が商売を営むというのは誉められたことではないし、それが若く未婚の女性となればなおさらだ。エリザベス・マクマリーの名は、かなりの部分を好奇心と、そしてわずかな嫌悪感を持って社交界で知られるようになっていた。

 エリザベスが姿を見せれば、噂の歯止めになったかも知れないのだが、当の本人は田舎にひっこんだままなものだから、噂ばかりが一人歩きしている。

 そんな姪を心配したレディ・メアリは何度か領地を訪れ、今後について相談に乗ろうとしたが(実際には見合い話を持って行ったというのは知っている)ことごとく撥ねつけられて現在に至る。
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