レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 その令嬢がついに屋敷へと戻ってくるのだ。パーカーは、主の出迎えに相応しく、屋敷の中が整えられているのかを確認するために、もう一度上から下まで屋敷を点検しているところだった。

 そろそろ、主が戻ってくる頃合いだろうか。すぐに出迎えられるように玄関ホールで待ちかまえようとそちらへ向かって歩き始めた時、玄関の扉が勢いよく開かれる音がした。

 慌ててパーカーは玄関ホールへと足を踏み入れる。そこに立っていたのは――彼の記憶にある少女がそのまま成長した、たいそう愛らしい女性だった。

「ただいま」

 鮮やかな赤い色のドレスが、彼女のすらりとした身体を包んでいる。小粋にかぶった帽子の陰から、好奇心が一杯の瞳がパーカーを見つめていた。

「やっと……ここに帰ってこられたわ! ねえ、帰ってくるって言ったでしょ!」

 帽子を勢いよく放り出して、エリザベスはパーカーの首にすがりついた。

「お、おおおおお嬢様! な、何を……!」

 いきなり若い女性にすがりつかれるとは思わなかった。エリザベスの勢いに押されたパーカーは、よろめいて数歩、後退してしまう。
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