レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
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エリザベスは、すぐに屋敷に馴染んだようだった。彼女の身の回りの世話をするために新しく雇い入れたマギーとも気があっているらしい。
毎朝、マギーは紅茶とミルクを持ってエリザベスの部屋へと上がっていく。そして、エリザベスがベッドで紅茶を飲み終えてから身支度を手伝うことになっているのだが――。
「パーカーさぁぁぁんっ!」
エリザベスが屋敷に戻って二週間ほど経過した朝、どたどたと階段を駆け下りてきたマギーが、パーカーが朝食の支度を調えている食堂へと飛び込んでくる。ベッドで朝食まで終える貴族も多いのだが、エリザベスは食堂でとることを好んでいる。
けれど、今日は一人で着替えて朝から出かけたらしく、寝室に寝間着が残されていて、一人で簡単に着ることのできる外出着がクローゼットから消えていた。
「……どうしましょう? どうしましょう? 探しに行ったりとか……」
おろおろしているマギーは、すがるような目をパーカーに向ける。パーカーは深々とため息をついた。
「朝食の時間を過ぎてもお帰りにならなかったら、探しに行きましょう」
恐らく、それほど遠出はしていないであろうけれど。