レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 あちらの屋敷には、マギーと同年代のメイドがたくさんいる。暇な時間には彼女達とおしゃべりすることができるだろう。

「昼食をすませたら、荷物をつめちゃいましょ。明日先方に送ってもらえば楽だものね」

 レディ・メアリからの手紙を押しやってエリザベスは帳簿に目を落とした。出かける前に片付けておかなければならないことがある。

 このところ収益が下がっているのが気になるのだ。マクマリー商会の扱う品は、エルネシア王国では高級品として流通しているし、人気がなくなったというわけでもない。

「……仕入れ値があがっている……? うぅん」

 エリザベスは考え込んだ。仕入れ値があがる要素はない。

 ラティーマ大陸は暗黒大陸とは言われているが、内乱が続いていた以前とは違い、現在は安定している。

 天候も安定していて、大陸との貿易船も順調に航行していて、沈没など商売を始めてから一度も起きてはいない。

「もうちょっと調べないとだめね……出かける前に全部片付けるのはちょっと厳しいかも」

 エリザベスは、帳簿を机の上に置いた。こうなったら、叔母の屋敷に滞在している間にも仕事を進められるような体制を整えておくことにしよう。
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