レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「まあ。大陸のどんなところにかしら?」
「さあて、歴史だったか、文化だったか……」

 目をぱちぱちとさせたエリザベスが食いついたと思ったのか、レディ・メアリは、上品な手つきでティーカップを口に運ぶ。

「そうそう、絵に描いたような紳士だし。あなたと比較したら……それほど財産家でないのは残念だけれど……少なくともお金目当てで結婚を承諾するような卑しい品性の持ち主ではないわ」

 レディ・メアリの話は想定の範囲内だったけれど、絵に描いたような紳士というあたりが少しひっかかる。

 たいがいそういう男性は、面白みに欠けるというのがエリザベスの持論だった。

 それならそれで扱いやすい相手ならいいのだけれど、などと相手に失礼なことを考えていることなど微塵も感じさせず、叔母とのティータイムを楽しんでいるふりをしている。

 実際お菓子はおいしいし、茶葉はマクマリー商会の仕入れている中で最高級の品だからこちらの味も保証できる。話題さえ違うものなら楽しめるのに。
< 60 / 251 >

この作品をシェア

pagetop