レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
楽園騎士団と聖骨
 夕食後、図書室に引きこもったエリザベスのもとへ、パーカーが留守にしていた間の新聞を運んでくる。

「……確かに……ショッキングな記事ね……」

 エリザベスは記事を眺めて嘆息した。それから、選び出した記事を切り取って紙にはりつけ、ファイルにとじる。

「……楽園騎士団と聖骨?」

『スキャンダラス・ニュース』に読みふけっていたエリザベスは思わず声を上げた。

「ああ……確かにそうかも。つながっていてもおかしくはないわね。宗教的に見れば聖骨って信仰の証としては最高だもの」

 エリザベスが見ていたのは、「楽園騎士団、聖者の骨を集める!?」と題した記事だった。

 記事によれば、楽園騎士団は聖骨を独占し、信者たちの心を取り戻すのが目的だという。

「聖骨なんか独占して、信仰心は戻るのかしら。パーカー、どう思う?」

「……難しいでしょうね。私は日曜日ごとに礼拝に通ってはいますが、それでも聖骨を持っているからといって、楽園騎士団の仲間入りをしようとは思いませんよ」

「あなたは正常な判断力を持っているからそう思うだろうけれど」

 エリザベスは考え込む。パーカーはそうかもしれない。けれど、信じ込みやすい人ならどうだろう?

 世の中の人間の大半は、信じやすい人であることをエリザベスは知っている。彼女の父親がそうであったように。
< 69 / 251 >

この作品をシェア

pagetop