レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
 エリザベスの計算は大当たりだったようで、慌てた秘書が奥へと駆け込んで五分とたたないうちに、アンドレアス本人が出てきた。背は高いが、猫背なためか一瞬小柄に見える。

「これはこれは、お嬢様。わざわざ追いでいただかなくても呼びつけていただければよかったのに――おい、お茶をお持ちして」

 一番いい茶葉だぞ、と秘書に叫んでおいてアンドレアスは二人を自分の仕事部屋へと通した。

 すすめられないうちにエリザベスはアンドレアスのデスクに向かい合っている椅子にすとんと腰を落とし、高々と足を組んだ。脱いだ帽子は、パーカーの方へと放り投げる。

「さて、アポも取らずにわたしが押しかけてきた理由はわかるわよね?」

 アンドレアスはわけがわからないといった表情で首を横にふった。

「わからないのなら、しかたないわね」

 深々とため息をついたエリザベスは爆弾を投下した。容赦なく、一気に。

「あなた、ラティーマ大陸から送られてきた品をちょろまかしているわよね?」

 その言葉に、アンドレアスの目が泳ぐ。

「おかしいとは思ったのよ。仕入れ値も変わってない。変わる要素もない。売値もそれほど落ちてはいない――でも、増えたものが一つだけあるの」

 アンドレアスの神経質そうに皺の寄っている額に汗がにじんだ。
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