レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「ボックス席をよこすだなんて洒落てるわね――何を着ていったらいいと思う?」
「危険です! おやめください!」
 そんなところに主一人で乗り込ませるわけにはいかないと、パーカーは必死でエリザベスを止めようとした。むろん、彼にエリザベスを止めることなんてできるはずもないのだが。

「行かないわけにはいかないでしょ。会わせろって要求したのはこっちなんだから。ねえ、マギー、この間仕立てたラベンダー色のドレスにしようかな。銀とアメジストの髪飾りと……ハンドバッグはどれがいいと思う?」
 言葉の前半でパーカーを封じてしまうと、後半ではマギーと今夜の打ち合わせに入る。
「ピンクのドレス? やあよ、あれ着ると太って見えるんだもの」
 張りきってやってきたマギーとあれやこれやと打ち合わせをすませると、エリザベスはぽんと手を打ち合わせた。

「あなたにも来てもらうわよ、チケット……取れればいいんだけど」
 エリザベスは、自分で電話を取り上げて劇場へ電話をかけ始める。
 むろん、人気の舞台なだけにチケットはほぼ売り切れだったのだが、最終的にはチケットを手に入れることに成功した。
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