レディ・リズの冒険あるいは忠実なる執事の受難
「パーカー。叔母様とご一緒したいから、チケット取ってくれる?」
「かしこまりました。人気の舞台ですから少し先になるかとは思いますが――」
 最後まで見てはいないが、レディ・メアリを誘ったら喜びそうだ。
 日頃心配ばかりかけているから、この辺りで少し叔母を喜ばせておいた方がいいだろう。

「よろしければ」
 丁寧な口調でヴェイリーが話に割りこんだ。
「このボックス席は、私が一か月貸しきっています。どうぞ、こちらの席をご自由にお使いください」
「まあ、ありがとう」
 このボックスを一か月貸しきりにするとは豪勢な話だ、とエリザベスは素早くボックス内を見回して値踏みした。

 何もないのにここを一か月貸しきりにするなんて、商売人ならまずやらない。よほど贔屓の役者がいるのか――ひょっとしたら、エリザベスのような人間を招き入れるのに利用されているのかもしれない。

「いえ――ただのお詫びですよ、アンドレアスがご迷惑をおかけした、ね。ご都合がよろしければ、今夜我が家のパーティーにいらしてください。ミニー・フライも来ますし、最近若い女性に人気の……誰だったかな、ああ、そうダスティ・グレンとかいう役者も来ますから」
 ミニー・フライとダスティ・グレンの醜聞を知っているのかいないのか、穏やかな笑みを浮かべながらヴェイリーは言う。
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