這い出ろ!サダ子さん
長く美しい自分の黒髪を手にして、貞子はギョッとする。

鼻を近づけて、くんかくんか。

「えっ?カビ臭いっ?嘘っ、よく嗅いでみてっ?」

「いやいや…臭い…なんか臭う…」

「えっ?やっぱり臭いっ?」

涙目になる貞子。

あー…だから言いたくなかったんだよなぁ…。

「なんで…毎日洗ってるのに…」

そりゃあ分かる。

すごく綺麗な髪だもの。

キューティクルつゆだくなのは、天使の輪が出来てるからよく分かる。

あの長い黒髪を、相当丁寧に毎日洗ってるんだろう。

手入れが行き届いているのは分かる。

……だが臭う。

< 44 / 70 >

この作品をシェア

pagetop