イジワルなキミの腕の中で
電車に乗ってここまで来る間も、ドキドキソワソワして落ち着かなかった。
デートっていうわけじゃないのに。
「わり、遅れた」
!?
前から来るもんだとばかり思っていた私は、後ろから声が聞こえたことにビックリした。
先輩は黒のダウンに濃い目のジーンズを履いて、学校用のマフラーでいつものように口元を覆ったラフな格好。
バイトに来る時とそれほど変わらない感じ。
あはっ。
「寝起きでしょ?寝ぐせが付いてるよ」
一カ所だけピョンと跳ねた髪の毛を見て、思わず笑みが零れる。