イジワルなキミの腕の中で


今日はしっかりカバンの底に折り畳み傘を忍ばせて来た。


何があっても大丈夫。



「ほら、行くぞ」



「ま、待って」



今日は遠出をするので、先輩は駅の中に向かって歩いて行く。



「私まだ切符買ってないんだけど」



迷わずに改札口へ行こうとしている先輩を見て、慌てて声をかける。



そして切符売り場に向かおうとした時。



「ほら、萌絵の分」



振り返った先輩が手にしていたのは、私の分の切符。



「ありがとう、買っといてくれたんだね。いくらだった?」



「やるよ」



「え?でも」



「いいから」



強引に切符を渡されて、先輩は財布を出そうとする私をムシして改札を通った。


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