オレンジの片想い
「ん?あたしが揃ってから?何なに?」
「私、ずっと気になってたんだから!」
手を止め、ふたりともわたしの方を見つめる。一息おいてから、わたしはそれに答える。
「.....蒼真が、いたの」
...沈黙。
わたしの一言に彼女たちは目を丸くして数秒間静止した。それから言葉の意味をようやく理解したところで、月菜が立ち上がりそうな勢いで、叫ぶように大きな声を上げた。
「え...え、ええええ!?蒼真って、え?せ、せ....」
「瀬川くん?」
咲歩が冷静に月菜の言いたいことを代弁した。それに私は深く首を縦に振った。彼女たちは信じられないと言わんばかりの表情だ。
「な、なんで...瀬川くんが?転校したんじゃ...」
「そうなんだけどね。中3の時こっち戻ってきてたんだって」
「.....こんなことってあるんだね.....」
「わたしもびっくりしたよ、こんな偶然あるの?って」
へらりと笑い、中断していた食事を再開する。熱かったオムライスは少し冷めてしまっている。
「ゆきは...大丈夫、なの?」
訊きづらそうに、遠慮がちにわたしにそう問う咲歩。月菜も、咲歩と同じような顔をしていた。
蒼真がいなくなって、わたしは後悔やら悲しみやらが押し寄せて、泣いてたことが多くて。何があったのかをを知っているのは、月菜と咲歩だけ。"大丈夫?"、それはわたしの過去を知っているからこその言葉。
「うん、大丈夫だよ。ありがとね」