オレンジの片想い
中学が一緒だったわたしたちは当然それぞれの家も同じ市なので、3人で電車に揺られ、そこでも周囲に配慮しながらも喋っていた。
話が尽きないってすごいな、わたしら。
「ただいま」
咲歩と月菜と別れ、リビングのドアを開けながら言うと、キッチンの方からわたしのお母さんが顔を出した。
「おかえり~。遅かったね」
「話し込んじゃってさ」
「まー女子は仕方ないね。もうすぐお風呂沸くけどどうする?先に入る?」
「あー....うん。そうしよう、かな」
「どうせいっぱい食べてお腹空いてないんでしょ」
「わ、ばれてる」
さすがお母さん。わたしのことわかってるね。
咲歩たちと食べて話してしていたから、全然お腹減ってないんだよね。そういうのも見越してお風呂に入るか訊いたんだな。
2階にいこうとしたら、母の言っていた通りすぐにお風呂が沸いた音楽が鳴った。
湯船に浸かると、ひとりの世界。
どうしても考え事をしてしまうのだ。
「はあー.....」
小夏ちゃん.....蒼真の好きな人。
蒼真が、小夏ちゃんを好きなんだってことを言葉にして彼の口から聞いたとき、ばればれだったっていうのもあるんだけど、それを抜いてもあまり驚きはしなかった。
ああ、やっぱり好きな人いるんだなって。
だけど、わたしのなかのどっかでなにかが、磨りガラスみたいにぼやけて。
その"何か"のこたえ
それはわたし自身がいちばんよくわかっていたんだ。だけど、気づかない振りをした。
そうすれば、小さなこの感情が消えてくれるんじゃないかって、思ったんだ。