オレンジの片想い

リスタート


朝。目覚まし時計に叩き起こされ、眠い目を擦り立ち上がる。



朝食やらを済まし、まだ1回しか着ていない制服に袖を通した。嗅ぎ慣れない新品のにおいが、昨日よりも高校生になったことを実感させた。



「行ってきまーす」


「行ってらっしゃい」



...ちょっと早く出ちゃったかな。



早く着いてもまだ馴染めていない教室では、話す人もいなくて暇になってしまう。月菜のクラスに行こうにもいなかったら虚しいし。


じゃあなんでこんな時間に家を出たのかって言ったら、まだ学校までの距離とかかかる時間も慣れてないから、早めに出ないと遅刻しそうで不安なんだよね。



ひなせちゃん来てたりしないかなあ。



あ、でも友だち増やすチャンスだよね。話しかけるの待ってたら余計話しかけづらくなりそうだし。頑張るしかない。




足元を見て歩いていてふと顔を上げれば、もう学校のすぐ傍にある駅の前。


マナーモードにしてあるスマホを取り出し時間を確認すると、家を出て15分程経っていて、無意識のうちに早歩きになっていたんだと気づく。



明日からはもうちょっと遅く出ても間に合いそう。



歩くスピードを緩め、駅を通過するときに何気なく改札の方を見ると、そこには知っている顔が。



目が合う前に立ち去ろうとしたのに、ばっちり合ってしまった。


逸らすわけにもいかず、どうしようかと考える。だけど向こうはわたしと同じ気持ちなんかじゃなくて、無邪気な笑顔で手を振ってきた。

反射的に小さく手を振り返し、名前を呼んだ。



「小夏ちゃん」


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