オレンジの片想い

「雪葉ちゃんってさ、蒼真がこっち来る前のとこで仲良かったの?」



その問いに瞬時に返答することができなかった。

わたしが、敢えて彼の話題を避けていたから。だけど小夏ちゃんは他意はないようで、単純に思ったことを口にしただけみたいだった。



「んー...まあ結構喋ってたりはしてた、かな」


「昨日のふたりみて、仲良さげだなーって。再会できるってすごいよねぇ」


「うん。わたしなんてもう一生会えないと思ってたもん」


「そうなの?それで遇えてるんだから、なんか...こう、離れても、出逢う運命みたいな?いいよね、そういうの!」



冗談っ気もなくわりと真面目に言った小夏ちゃんに、わたしは思わず吹き出してしまった。


突然笑い出したわたしを見て、彼女は訳がわからないといった顔をして戸惑っていた。



「あははは、小夏ちゃん...ふ、あははっ」


「え?ど、どこか笑うツボあった?」


「いや...小夏ちゃんって意外とロマンチストなんだね」



離れても出逢う運命、って。



「ええー?いいじゃん!」


「ただの偶然だって。わたしらにそんな運命あったらきもちわるい」



わたしたちが遇ったのは、運命でも必然でもない、ただの偶然。


少し大袈裟に表情を付けて言うと、小夏ちゃんはひどい顔をしているであろうわたしを見て笑った。



「あはは、顔すごいよ。そんなに嫌なんだ」


「だってそーゆう関係じゃないし」


「あれ、でもあたし蒼真は雪葉ちゃんの事好きなのかなあって思ってたんだけど」



.....え。放たれた一言に、仰天した。



「え!?ないない、それは絶対ない!」
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