オレンジの片想い
鈍感そうだなとは思ってたけど、まさかここまで鈍いなんて...!
「え?そうなの?」
「うん!絶対ない!」
蒼真の気持ちに全く気付いてない上に、蒼真がわたしを好きなんて変な勘違いまで。彼の恋路は、もしかしなくてもだいぶ険しいのでは...。
これを蒼真に伝えたら、落ち込むのが目に浮かぶ。
言わないでおこうか、いやでも言わなかったら改善されないもんな。
「じゃあ、雪葉ちゃんは?」
「え?」
「蒼真の事好きじゃないの?」
直球、だなあ。悪意も何もない純粋な問いが刺さるけど、微笑って答えた。
「好きだよ。友だちとして」
好きだったのは_____わたしも蒼真も、過去のお話。今はもう違う。時が流れて、変わったから。
「そうだったのかあ」
「まさかそんな誤解されてるなんて思ってもみなかったよ」
「絶対そうだと思ったんだけどな、あたしは」
「全然当たってないね」
「うー、もっと人間観察しなきゃ」
「あはは、人間観察って」
....どうして、かな。わたし、"小夏ちゃんは?"って訊けなかった。訊くのも、その答えもこわかった。
校門をくぐると、まだ冷たい春の風が濃紺のスカートを揺らした。