オレンジの片想い
小夏ちゃんからしたら蒼真は後ろにいるから、声が聞こえ彼に気づき、女子をも虜にしてしまいそうな笑顔で彼を振り返った。
「おお、蒼真!おはよう」
「おはよ、蒼真」
「...はよ」
まだちょっと驚いてる顔。そんなにわたしと小夏ちゃんのコンビが珍しいのか。
まあ....それもそうだよね。昨日出会って話したばかりの人たちが喋ってるんだし。小夏ちゃんは蒼真の好きな子だし。わたしはそれを知っているわけだし。
「小夏、いつの間にこいつと仲良くなったんだ?」
こいつって何だ、こいつって。
突っ込みたかったけどやめた。ふたりの会話を邪魔しちゃだめだと思ったから。
「行くときにね、駅で会って。それから今までずっと話してたの」
「へー...そうなんだ」
「雪葉ちゃんって面白いね!」
わたしって面白いんだ。ちょっと嬉しいなんて思いながら、別の事を考えていた。
昨日も今日も。ずっとふたりが会話してる。それはわたしが遠慮しているってのもある。だけどそれだけじゃなくて。
蒼真が、小夏ちゃんだけを見て話してるからなんだ。
「おー、こいつと話すのは飽きねぇぞ」
だけど彼は、自然と俯きはじめたわたしの頭にぽんと手を乗せ、そんな事を言う。
「...そりゃどーも」
「ん?何、不貞腐れてんの?」
「別にー普通だよ」
ああもう。こういうとこ、昔からずるいよなあ。
その笑顔は、わたしに向けられたものじゃないのに。