オレンジの片想い
言いたい事なんて、何のことなのか考えなくてもわかる。
「....」
「小夏ちゃんの事でしょ?」
なかなか言葉を見つけられないでいる蒼真を見かねて言った自分の声が、どうしてか冷たいものに思えた。
"小夏ちゃん"
そのワードを出しただけでほら、蒼真の顔はわかりやすく恋をしているって言ってる。
「駅で偶然会って....それで話してたら仲良くなったの」
「それは聞いた」
「蒼真の事は何も言ってないから安心して。....あ、でも」
「でも?」
「小夏ちゃん、本当に全然気づいてなかった」
聞いた瞬間に、蒼真はわたしの想像と全く同じ表情をした。その顔に、わたしは苦笑いして更に事実を付け足す。
「小夏ちゃん、蒼真がわたしのこと好きだと思ってたみたい」
ああ....蒼真の顔が酷いものに変わっていく...。
「だ、だからさ」
「.....うん」
「もうちょっと、積極的になっても良いんじゃないかな」