オレンジの片想い
恋愛上級者とか、全然違うのに。
「なんか蒼真きもちわるいね」
「え、いきなり酷くね?」
「あはは。でも、きもちわるくなるくらい好きってことなんだもんね?」
「.....ストレートだな」
「今さら照れるなよ~」
「黙れ、俺をからかうな!」
「あははは」
眉間に皺を寄せながら、頬をほんのり染める蒼真。よほど恥ずかしかったのか、彼は机に突っ伏し顔を隠した。男子の恋模様ってこんな感じなんだなあって思った。
チャイムが鳴って後ろを向いていた子などが前を向いて座り直した。その猶予を与えていたかのように、先生が数秒後に教室のドアを開いた。
先生が足を踏み入れる間際、隣の彼は自らの腕を枕にするようにして首をこちらに向ける体制で、わたしの方を見た。それが視界に入ったから、わたしもそちらを向く。
「ありがとな」
小さな声だったから、口パクのようになってわたしに伝わった。
「.....うん」
先生がちょうど教壇に立ったとき、すぐに目を逸らし黒板を見る振りをした。だけどだんだんと目線は下がっていって、耳に掛けていた髪を垂らしスカートを握りしめた。
.....今の笑顔は、反則だ。
ドキドキと高鳴る胸の音の裏で、ズキズキと痛む音がした。