オレンジの片想い

「わたしは、わたしの好きになった"ひなせちゃん"を紹介したいと思ったの」



だから、そんな悲しいことを言わないで。


まだ出会って1日。一緒にいた時間なんて数時間だけど、確かにわたし、ひなせちゃんといて楽しいって思ったよ。


最初の友だちがひなせちゃんでよかったって、思った。



「それにね、わたしの友だちはそんなこと思わないよ」



月菜はきっと、いい子だねって、そう言って笑うと思うんだ。


なんせ彼女は悪口を言わない。さすがに理不尽なことには愚痴をこぼすが、自分に少しでも非があれば、絶対に言わない。


梓ちゃんたちとの時も、彼女は誰も責めなかった。ただ、泣いていた。



そんな月菜が、ひなせちゃんのことを悪く言うだなんてありえないのだ。



「あり...がと」



照れたように、笑うひなせちゃん。


今になって思えばすごく直球なことを言ったな、と少し顔が熱くなった。



「...3組、行ける?」


「.....うん」



2度目の問いかけにしっかりと頷いたのを確認し、わたしたちは隣のクラスへと入った。
< 117 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop