オレンジの片想い
「わたしは、わたしの好きになった"ひなせちゃん"を紹介したいと思ったの」
だから、そんな悲しいことを言わないで。
まだ出会って1日。一緒にいた時間なんて数時間だけど、確かにわたし、ひなせちゃんといて楽しいって思ったよ。
最初の友だちがひなせちゃんでよかったって、思った。
「それにね、わたしの友だちはそんなこと思わないよ」
月菜はきっと、いい子だねって、そう言って笑うと思うんだ。
なんせ彼女は悪口を言わない。さすがに理不尽なことには愚痴をこぼすが、自分に少しでも非があれば、絶対に言わない。
梓ちゃんたちとの時も、彼女は誰も責めなかった。ただ、泣いていた。
そんな月菜が、ひなせちゃんのことを悪く言うだなんてありえないのだ。
「あり...がと」
照れたように、笑うひなせちゃん。
今になって思えばすごく直球なことを言ったな、と少し顔が熱くなった。
「...3組、行ける?」
「.....うん」
2度目の問いかけにしっかりと頷いたのを確認し、わたしたちは隣のクラスへと入った。