オレンジの片想い

「月菜ー!来たよ」



昨日とは違い、教室に入ってすぐに月菜の姿を見つけた。

ドアとは離れた位置に背中を向けていたから、近づきながら大きな声で言うと、彼女は振り向き嬉しそうな顔をした。



「おお、雪葉~!」



そんなに離れているわけでもないけど、月菜はわたしたちに大きく手を振った。



「連れてきたよ。こちら、ひなせちゃん」



ひなせちゃんを隣に立たせて、紹介する。


緊張から、微かに震えているのがわかって、背中をポンポンと優しく叩いて落ち着かせた。



「は...じめ、まして...須田、ひなせ...です」



よし、よく頑張った!


心の中でひなせちゃんを褒めながら、カチンコチンに固まってすごく不自然な彼女に、ちょっと笑ってしまった。



「はじめまして。佐伯月菜です!」



ひなせちゃんの自己紹介に微笑みを浮かべて、月菜は明るくそう言う。思った通りの表情だった。



「ひなせちゃんって、かーわいいね!目おっきい~」


「え...や、そ、」


「月菜、ひなせちゃん困ってんじゃんかー」


「わわ、ごめんね!でも本当かわいい」



月菜が言うこと、わたしも思っていた。前髪が長いけれど、その中から覗く目は黒目がちでくりくりですごくかわいいのだ。


前髪切らないのかなあ。切るというか前髪上げるだけでも絶対かわいいのに。



そこでふと昨日の会話をまた思い出して、月菜に問うた。



「そいや月菜のともだちは?」



< 118 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop