オレンジの片想い
「月菜ー!来たよ」
昨日とは違い、教室に入ってすぐに月菜の姿を見つけた。
ドアとは離れた位置に背中を向けていたから、近づきながら大きな声で言うと、彼女は振り向き嬉しそうな顔をした。
「おお、雪葉~!」
そんなに離れているわけでもないけど、月菜はわたしたちに大きく手を振った。
「連れてきたよ。こちら、ひなせちゃん」
ひなせちゃんを隣に立たせて、紹介する。
緊張から、微かに震えているのがわかって、背中をポンポンと優しく叩いて落ち着かせた。
「は...じめ、まして...須田、ひなせ...です」
よし、よく頑張った!
心の中でひなせちゃんを褒めながら、カチンコチンに固まってすごく不自然な彼女に、ちょっと笑ってしまった。
「はじめまして。佐伯月菜です!」
ひなせちゃんの自己紹介に微笑みを浮かべて、月菜は明るくそう言う。思った通りの表情だった。
「ひなせちゃんって、かーわいいね!目おっきい~」
「え...や、そ、」
「月菜、ひなせちゃん困ってんじゃんかー」
「わわ、ごめんね!でも本当かわいい」
月菜が言うこと、わたしも思っていた。前髪が長いけれど、その中から覗く目は黒目がちでくりくりですごくかわいいのだ。
前髪切らないのかなあ。切るというか前髪上げるだけでも絶対かわいいのに。
そこでふと昨日の会話をまた思い出して、月菜に問うた。
「そいや月菜のともだちは?」