オレンジの片想い
「いるよー、あそこに」
月菜が指を指した先は、わたしたちが呼ぶまで彼女が向いていた方向。そちらを見れば、高い位置でお団子を結んだ女の子がいた。
「あ....あたし入っていいの?」
注目を集められ、戸惑ったようにそう言ったその子に、月菜が大きく頷いた。
近寄ってくるその子は、昨日月菜が言っていた"彩ちゃん"なんだろう。だけど、遠くから見ていても思っていたけど、近くで見るとやっぱり、この子。
「はじめまして!あたし、山城彩です。よろしくね!」
「あ、篠井雪葉です。こちらこそよろしくね」
目を見るとき、彩ちゃんを見下げた。彼女は、わたしのことを見上げていた。
「....雪葉ちゃん今、小さいなって思ったでしょ?」
「えっ?いや....うん。ごめん....」
「あははは、いいよ。本当の事だしね!」
そう、背が小さいのだ。
気にしているだろうことに触れて怒ってしまったかと思ったけど、笑いとばしてくれて安心した。もうどうしようもないから気にせず認めているんだろうな。
「何cmか訊いていい?」
「いいよ。143cmなの、びっくりでしょ?雪葉ちゃんは?」
「うん、びっくり....わたし161cmだよ」
「20cm近く違うじゃん、あたしら!道理で巨人に思えたわけだ!あはは」
巨人て.....たしかに、彩ちゃんからしたらそう見えるな。わたしからしたら....小人?
月菜の言ってた通りの明るい人だなあ。
そこで、ひなせちゃんを紹介するため、少し退き気味の彼女の背中を押して輪にいれた。すると、わたしよりも先に彩ちゃんが口を開けた。
「あれっ?ひなせじゃん!見えなかった」
「ずっといたよ...?」
「そうだったの!ごめんね」
「ん?ふたりは....知り合い?」