オレンジの片想い
呼び捨てにしているから当然知り合いなんだろうけど、思わずそんな当たり前のことをを訊いてしまった。
「うん!中学からのね」
にかっと爽快な笑顔で、ひなせちゃんを引き隣に並ばせた、小柄な彼女。
ひなせちゃんもわりと小さめだけど、彩ちゃんと並ぶと大きく見えた。なんて、言えるほど無神経じゃないけど。
「雪葉、ちゃん。3組にいる、友だち...っていうのは、彩のこと...だよ」
「ああ!そうだったのか」
なんという偶然。
ひなせちゃんがわたしを紹介すると言った、その友だちってのは彩ちゃんのことで、月菜が紹介するって言ってた人とおなじだったのか。
高校に入ってから、こんな偶然が多いなあ。なんか、すごい。
「昨日ひなせが言ってた子って、雪葉ちゃんの事だったんだね」
「うん...そう、だよ」
「え?わたしのことを?」
「そう!昨日ねー、突然電話してきたかと思ったら、珍しくテンション高くてさ。どうしたのって訊いたら初日に友だち出来たって大喜びしてたの」
ひなせちゃんも、わたしと居れたことをそんな風に思ってくれてたんだ。
「わたしもね、昨日月菜にひなせちゃんのこと話してたんだよ!月菜も彩ちゃんの話してたし、やっぱみんな嬉しいもんだね」
「特に私たち、友だちできるかなって不安いっぱいだったしね」
「あ、それあたしたちもだよ!」
「そうなんだ?やっぱ知らない子ばっかじゃそうなるよね」
「あたしなんて、こいつちっちゃいしきもいとか思われてたらどうしようかと」
「あははは、それ酷すぎ」
入学式あるあるのようなものを語っていれば、あっという間に休み時間は過ぎていって、3組の教室を出て自分達のクラスへ向かった。
「おわっ」
そのとき、ドアの付近でトン、と軽く背中を押され、躓いた時のように教室へ入る。
こんなことする人は限られてる。だから、誰かなんてとっくに予想済みで振り返った。