オレンジの片想い
唐突にきた直球な問いに、箸が止まる。
「.....えっ?な、なんで?」
昨日の蒼真と同じ状況だ。こんな態度ではますます怪しく思われてしまうと、そうわかっているのに、嘘はつけなくて。
「雪葉ちゃんと、瀬川くん....仲、いいし.....それに」
何か誤魔化せる嘘を探すわたしを、全て見透かすような真っ直ぐに刺さる視線。逸らせずに、わたしも彼女を見た。
「雪葉ちゃんの....表情が、好きって、言ってるみたい...だった、から」
どうやらわたしは、完全に嘘を吐くことができない人間のようだ。表情まで偽ることなんて、わたしにはできない。ひなせちゃんを欺くこともできない。
...結構、鋭いんだなあ。
わたしが嘘を吐こうとしたのは、ひなせちゃんにじゃなくて、自分に、なんだけど。
「.....好き、なように....見える?」
「うん....すごく。違う、の?」
「.....」
肯定も否定もできない。
完全に否定はできないことは確か。だけど、肯定してしまうのには抵抗があって、それはどうしてなのか自分自身がよくわかっている。色々と複雑なのだ。
全ては自分を守るため。
わたしは臆病だから、傷つきたくなくて、傷のつかない道を選びたがる。今だってそうだ。それなのに、わたしの意思とは反対の道を行きたがる感情がいるのだ。それも、強いもので。
「....昼休み、話すよ」
「.....ん、わかった」
月菜と咲歩には、同時に言いたい。月菜にだけ先に言うとか、そういうことはあまりしたくなかった。
だけど誰かに聞いてもらわないと限界に近い。
そう思って、ひなせちゃんに話すことにした。