オレンジの片想い
弁当後、昼休み。
弁当箱だけを鞄に直して、椅子はそのまま。わたしは約束した通り、今胸の内にあることを全部吐き出した。
「蒼真はね、中学から仲が良くて....」
それから彼に惹かれたこと、修学旅行でのこと、転校してしまったこと、最後に話したことも。過去にあったこと全て打ち明けた。
彼女はわたしの話に、何も言わずに槌だけを打って、聞いてくれた。
「で....昨日偶然会って。だから、仲がいいの」
「そう....だったんだ」
「うん。久しぶりに会えて、話してたらね。蒼真に好きな人がいるって知ってさ」
蒼真の好きな人....小夏ちゃん。
名前は出さなかった。出さなくても、きっとひなせちゃんはそれを察して、訊いてはこないと思った。
「わたし、そのときは"応援してる"って言ったの。でもなんか、もやもやしてて....その理由はいちばんわたしが解ってるんだけどね」
まだ口に出すのは怖い。でも、もう逃げられない。今はきっと、認められるいい機会なんだ。
「....わたし、凄い臆病なんだよ。傷つきたくないから、ずっと知らないフリしてた」
言いながら、臆病な自分を自嘲った。
「好きな人がいる人を好きになるなんて、不毛でしょ?傷つくことなんて目に見えてる。だから、蒼真に惹かれてる自分をずっと否定してたの」
わたしだって、好きでいたい。好きだって胸を張って言いたい。だけど、傷つくことが多いとわかっていて好きだなんて、わたしにはこわかったんだ。
目の前の彼女は、真剣な表情だった。
痛いくらいに真っ直ぐで。わたしは眉尻を下げて薄く笑ってみせた。
「....でももうだめだね」
降参、だ。
「わたし、蒼真が好き....だよ」