オレンジの片想い
「ひなせちゃん!」
「....!?」
ばっと、勢いよく後ろを振り返ると、彼女は突然のわたしの行動に驚いたように目を大きく開いた。
「連絡先!後で訊くって言ったのにまだ教えてもらってなかった!」
「.....あ」
ひなせちゃんの方も忘れていたらしく、思い出したように言った。
顔を見合わせて、困ったように笑い合った。
「今、教えてくれる?」
「うん....ちょっと、待ってね」
彼女はごそごそと鞄の中から白いスマホを取り出し、その間にわたしも水色のケースを付けたそれを取り出した。
「ラインで、いい?」
「いいよー」
新しい友だちの項目に、"須田ひなせ"の文字。無意識に頬が緩んだ。そのままスマホを両手で握り締めて、
「わたし、今から蒼真のも訊いてくる」
と、ひなせちゃんにだけ聞こえる音量で伝えた。彼女はわたしの目を見て、両手で握りこぶしを作り、ジェスチャーで「がんばれ」と告げていた。
それに大きく頷いて、くるりと体を半回転させた。