オレンジの片想い
楽しみにしていることって始まるまでの時間がやっぱり長くて、漸くホームルームが終わると、また鼓動が速く鳴り出した。
皆が一斉に立ち上がり、教室内は一気に人が少なくなる。
「雪葉ちゃん、ばいばい」
「ばいばい!また明日」
ひなせちゃんが、席を立たないわたしと蒼真を見てちょっと驚いたような顔をした後、スマホを持ったわたしの手を見て察したのだろう、笑顔で教室を出て行った。
誰もいなくなった、教室でふたりきり。蒼真が転校すると聞いた日と同じだ。
わたしは隣も見れずに、下を向いていた。
流れる沈黙。破ろうとして、勇気を振り絞って体ごと左側へ向けると。
「ん。連絡先」
ちょうど、同じ時に蒼真がスマホを突き出してきた。
どうやら、黙っていたのは画面をいじっていたからのようだった。
「....あ、」
「QRコード読み込める?」
「うん....あり、がと」
「おう」
わたしのスマホの中に、蒼真の名前も追加された。そして、彼のスマホの中にもわたしの名前が追加された。
彼と、もっと繋がれたような、そんな気がして。
またしても、頬が緩んだ。