オレンジの片想い
繋がっていた視線の先で、陽翔の目はほんの一瞬だけ見開かれた。それからその表情は、喜々としたものに変わる。
「いい、のか?」
「うん。断る理由ないしね」
1人で勉強するよりは、2人の方が教え合いとかだってできるもんね。
「じゃあ今日放課後な。どこでする?」
「んー...どこでも」
「どこでもってお前なあ...じゃあ図書室とか?」
.....図書室、か。
その単語を聞くと思い出してしまう。蒼真といた、幸せな記憶を。
「うん、わかった。場所わかんないけど」
「俺も知らねえや」
「え、そうなの」
「おう。まあ先生に聞けばいいだろ」
「ん、まあね。じゃあ放課後、図書室決定で」
決まったところでちょうど予鈴が鳴り、陽翔は微笑み、前を向いた。
それと同時にひなせちゃんが戻ってきて、挨拶を交わす。訊けばやはり、3組に行っていたようだ。
先生も来るし後ろを向いているわけにいかないので、前を向いて座りなおす。
左隣はまだだれもいなくて遅刻かと少し心配していたら、教室の前のドアから蒼真が焦る様子もなく歩いて入ってきた。