オレンジの片想い

繋がっていた視線の先で、陽翔の目はほんの一瞬だけ見開かれた。それからその表情は、喜々としたものに変わる。



「いい、のか?」


「うん。断る理由ないしね」



1人で勉強するよりは、2人の方が教え合いとかだってできるもんね。



「じゃあ今日放課後な。どこでする?」


「んー...どこでも」


「どこでもってお前なあ...じゃあ図書室とか?」



.....図書室、か。


その単語を聞くと思い出してしまう。蒼真といた、幸せな記憶を。



「うん、わかった。場所わかんないけど」


「俺も知らねえや」


「え、そうなの」


「おう。まあ先生に聞けばいいだろ」


「ん、まあね。じゃあ放課後、図書室決定で」



決まったところでちょうど予鈴が鳴り、陽翔は微笑み、前を向いた。


それと同時にひなせちゃんが戻ってきて、挨拶を交わす。訊けばやはり、3組に行っていたようだ。



先生も来るし後ろを向いているわけにいかないので、前を向いて座りなおす。



左隣はまだだれもいなくて遅刻かと少し心配していたら、教室の前のドアから蒼真が焦る様子もなく歩いて入ってきた。
< 151 / 281 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop