オレンジの片想い

何の余裕なんだと心の中で突っ込みながら、隣で音を立てて席に着いた蒼真を見る。するとそんなわたしに気づいたのか、彼もこちらを見てきたから、ドキリとした。



「....お、はよう」



ちょっと詰まりながらも、朝の決まり言葉を言う。

蒼真は、ふっと微笑んだ。



「おう」



....おはようの返しが"おう"って。どうなの、それ。


それから話すこともなくて、迷っていたら億劫になってしまい、その上先生が来てしまったから何の言葉も交わさなかった。



先生の話を聞き流しながら、ふと思い出す。




そういえば小夏ちゃん、蒼真と放課後にふたりで勉強するって言ってたんだっけね。


聞きたくないのに、話が訊きたい。

わたしは矛盾だらけだ。



それも全部、蒼真にとってのわたしが近い存在であるための行動なんだよな。ああ、どんどん嫌な人間になっていく。



HRが終わって、蒼真に話しかけようと思った。

だけど、彼はすぐに席を立ちどこかへ行ってしまって、訊くことができなかった。
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