オレンジの片想い
そして、あっという間に放課後になってしまった。
今日は、全然話せてないな。
蒼真からも話しかけてきてはくれないし、彼は気まぐれだ。
例え話の内容が、小夏ちゃんの事だとしたって少しでも関わり合えるなら、全然構わないのに。
話せないことがいちばん寂しい。
せめて"ばいばい"ぐらい言おうと思ったのに、HR終わってすぐに教室飛び出して行っちゃってさ。
....小夏ちゃん、かな。
チクリ、小さな小さなかすり傷。
「雪葉ー。行くか」
陽翔がわたしを呼ぶ。
顔上げたら、元通り。大丈夫。痛むけど、まだ平気。
「うん。席、空いてるかな?早く行かないとね」
「だなー。とりあえず通りすがった先生に場所訊くか」
ふたり、誰か先生に出会うまでふらりと歩き出した。何故か全く会えず、ちょっと迷子になっているところで、漸く先生がいて、場所を教えてもらう。
その先生の頭が恐ろしく禿げ上がっていたことに、後からこらえていた笑いを放出させた。
陽翔といると、落ち着いた。
教室を出て図書室に辿り着くまでに想定以上に時間を費やしてしまった。
それはそれで楽しかったからいいんだけど。
静粛にしなければならないという当たり前のルールがある上に、初めて入る本の部屋。わたしたちは静かにドアを開けた。