オレンジの片想い
「....あれ」
「人、全然いねえな」
目の前に広がっている光景に、思ったことは同じだった。
もっと人がいると思っていたから、席空いていなかったらどうしよう、なんて心配していたけど、どうやら杞憂だったようだ。
1年生は、入ったばかりだから遠慮しているのかもしれない。
でも、上級生は普通に利用していたっておかしくないのに、全く見当たらない。ここにいるのはわたしたちだけなんじゃないかってくらい。
「まあ、人いない方がやりやすいし。とりあえず座ろう」
陽翔の提案にこくりと頷いて、はしっこの陽当たりの良い席に座った。
春とはいえまだ肌寒いから、当たる陽が暖かい。
「じゃあ、何からやりますか」
「んー。陽翔は何が得意なの?」
「俺、数学とか理科とか」
「わ、理数系だね。わたし逆だよ。英語だけだけど」
「ああ、英語得意だったな」
「うん。ま、春休みの課題のやり直ししとけば大丈夫でしょ」
「だな。やるか」
ふたり、頷いて気合いを入れた、とき。
「あれ、雪葉ちゃん?」