オレンジの片想い

一斉に手を止めこちらを見るふたり。



目で"どうしたの"って訊いているのがよく伝わってくる。

言葉にするのがドキドキする。前もこんな感じだったっけな。あんまり覚えてなかったのに、蘇ってきたようで、なつかしい。




「....好きな人が、できた」




言った瞬間に頬に熱を感じた。だけど、すぐに反応のない咲歩と月菜。聞こえなかったのだろうかとふたりの顔を見ると、目を丸くして驚いているようだった。



「も、もしもし?大丈夫?」



固まるふたりの目の前で手を振ってみると、彼女たちは漸く口を開いた。



「えっ......だ、だれ、雪葉のクラスの人?」


「あ、うん」


「ちょ....っと待って。ゆき、もしかして」



いつになく真剣に、咲歩はわたしと視線の糸を絡み合わせる。

彼女が言いたいことはなんとなく解っていた。

そしてその言いたいことは、たぶんわたしの心にあることと合っているんだろうということも。




「....瀬川、君?」



「...うん」




ほらね、ふたりはそんな顔すると思ってたし、咲歩が蒼真の名前出すだろうなってことも予想ついていた。月菜は動揺していつつも、きっと咲歩と同じように蒼真の顔を思い浮かべていたことだろう。


ふたりが驚くのも無理はない。


だって1度好きになっている相手で、その恋は迷宮入り。わたしが中学校生活で引きずった"後悔"の張本人なのだから。



でも、1度好きになっているからこそ、一緒にいればまた、同じところに惹かれていくんだ。
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