オレンジの片想い

目を丸くして驚くふたり。この表情は予想済みだ。



「ええっ!?だ、だれ!?」


「な、なんでゆきはそれを知ってるの」



月菜、さっきまで酔っぱらってたとは思えない真剣さだ。さっきまでの騒がしかった雰囲気ががらりと変わった。

彼女たちからの視線を受けながら、話す。この事も今日話す予定だったし。



「誰かは言っていいのかわからないけど、好きな人いるっていうのは本人から聞いた」


「......」



淡々と述べると、ふたりはなんとも言えない複雑そうな顔をした。ああ、なんだか申し訳ないなあ、こんな空気にさせてしまって。ふたりは優しいから、きっと何て言葉をかけたらいいのかって迷っているんだろう。



「そんな考え込まなくてもいいよ。わたしちゃんと受け止めてるし、大丈夫だから」


「....瀬川くんは....気づいてないんだよね」


「そりゃあね。恋愛のことになったらほんと鈍感だし。そこはちょっと咲歩に似てるかも...ああ、鈍感っていうより疎いって言ったほうが正しいな」




どうでもいいことを、べらべらと。


いつもより饒舌なのはたぶん、わたし自身がまだ完全に受け入れていない証拠なんだろう。それでも口には出さない。嘘をつく。


ふと、黙り込んだ彼女たちの方を見ると、予想していなかった表情のふたりがいて、少し驚く。



「....そんな顔しないで」



どうして、月菜と咲歩がそんなに悲しそうなの。
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