オレンジの片想い
ぽかんとこちらを見つめる蒼真。
「落ち込んでる暇があるなら、その男に倍の嫉妬させるくらい頑張ればいいじゃん!」
何、真面目に相談に乗って熱くなって説教までしちゃってんだか。偽善者なんじゃなかったっけ、わたし。まあ瞬時に計算できるような脳は持っていないんだけど。
「...そう、か」
「そう!嫉妬するくらい好きなんでしょ?気持ちは負けてないって」
「........」
「え、ここまで言ってそこで照れるの?」
ちょっといじってみれば目を逸らして、そっぽを向いてしまった。
本当、わかりやすすぎて可愛いぐらいだ。
「....ねえ。蒼真ってさ、小夏ちゃんのどこに惹かれたの」
自分の好きな人が好きな人の話なんて、普通ならいちばん聞きたくない話のはずなのに。
聞きたいと思ったわたしはどうやら普通じゃないらしい。
「ん...そう言われるとなんか難しいな」
ああ、やっぱそうだよね。好きな人のどこが好きってちょっと難しいの。でもそれって気持ちが薄っぺらくないっていう証拠だと思うから、それだけでもう、小夏ちゃんがどんなに想われているのかって解るよ。
蒼真は少し考える素振りを見せた後、懐かしむようにふっと微笑んだ。
「俺、転校したとこでも水泳部でさ。バタフライ専攻なんだけど、肩壊して」
「えっ...そう、なの」
「おー。暫く水泳できないってなったとき、もう泳いでる奴ら見てるのがもどかしくて辛くてどうしようもなかった時に、励ましてくれたのが小夏で」