オレンジの片想い
これが、わたしの知らない間の蒼真にあった出来事なのか。
「まあ色々支えられたわけよ。んで、自分でも単純だなって思うくらい単純に好きになったってわけ」
...もしも。もしもそこにわたしがいたら、わたしは何て言葉を彼に掛けただろうか。わたしの言葉で彼を救うことはできていたのだろうか。
そう考えたら、きっとわたしは言葉を見つけられないだろうと思った。
きっと、蒼真を救うことができたのは、他の誰でもない"小夏ちゃん"しかできないことだったんだろう。
前言撤回。聞きたくなんてなかった。
自分が、どれだけ劣っているかを改めて実感してしまった。
「まあ今はこの通り、完治したから。今日からの仮入部は全部水泳部行ってくる」
「ああ!そっか。今日から仮入部期間か」
すっかり忘れていた。
「雪葉はやっぱ写真部か?」
「え....うん。覚えて、たんだね」
「覚えてるよ」
....こんなちょっとのことでほら、また好きになってる。
一言でどこが好きだなんて、やっぱり答えられるわけないな。
「雪葉」
「ん?」
「ありがとな」
「........うん」
水泳ができなくなったとき、支えてあげられたのは小夏ちゃん。だけど、今蒼真を支えてあげられるのは、わたしだけだ。
だから、
「また何かあったら言って」
なんて、心にもないことを言ってしまうんだ。