オレンジの片想い

入部申請の日がいよいよ明日と迫った頃、いつも通る学校からの最寄駅で、ひさびさに見る人の姿を見つけた。



「...っ小夏、ちゃん」



思わず、呼び止めてしまった。最初の方は威勢がよかったのに、だんだんと語尾に近づくにつれて声が小さくなってしまったけれど、ちゃんと彼女に聞こえていたようで、こちらを向いた。

たった数日なのに、この天使の笑顔を見たのが本当に久しく感じた。



「雪葉ちゃん、お久しぶり~」


「だね。最近会わなかったもんね」


「ちょっとだけ早い電車に乗ってたの。でも今日は、寝癖直らなくて遅れた」


「あはは。それは大変だ」


「でしょー?ショートだからよく寝癖ついちゃうんだよね」


「わたし長いからあんまり。ついても髪くくるし」


「いいなあ。髪きれいだし」



いやいや、小夏ちゃんの方が相当綺麗だけどね。まあ、そんな嫌味を言うような子じゃないってわかってるけど。



むしろ嫌な方にとってしまうわたしが僻んでる。



そんな嫌な自分から目を背けたくて、話題を変えるべく、共通の話題を瞬時に考える。

えーっと、えーっと。あ、そうだ。



「そういえば小夏ちゃんって、何部に入るとか決まってるの?」
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