オレンジの片想い
もう今日で迷ってる人は決めなきゃならない、部活。明日申請日だし、この話題なら、と思った。
だけど、彼女の回答は予想斜めで。
「決めてるよー。あたし、マネージャーやりたいんだ、水泳部の!」
.........え。
「水泳部?なんで?」
なんとか平然を保ってそう問うと、小夏ちゃんはふ、と微笑んで答えてくれた。
「あたしね、小学生の時水泳やってて、自慢になっちゃうけど結構速かったの。でも....事故に遭って足に大怪我負っちゃってさ」
「事故....?」
「うん。自転車とぶつかったの」
昔のことだから、と彼女は笑う。わたしの脳裏には、蒼真が浮かんでいた。
「期待されてたのも全部なくなっちゃって、みんな離れていくじゃない?完治もまだまだ先だったから、そこでやめちゃった」
蒼真のことを救った小夏ちゃんが、どうやって助けて励ましたのか、それは小夏ちゃん自身が同じような体験をしているからなんだ。
蒼真が"色々"と言葉を濁らせたのは、小夏ちゃんのこの過去を、簡単には言えなかったからなんだろう。
やっぱり、小夏ちゃんにしかできないことだったんだ。
「だからね、マネージャーやりたいの」
「.....そう、なんだ」
少しでも、蒼真がいるから、とか焦ってしまった自分が大嫌いだ。なんて自己中心的。
こんなわたしが言えることは
「がんばってね」
この言葉しか、見つけられなかった。