オレンジの片想い
さよなら、恋心
小夏ちゃんの気持ちを知って、わたしは誰にも言わずにいた。そんな、言いふらすようなことはしないのが当たり前なんだけどさ。
蒼真にとっては、彼女の気持ちを知りたいんだろうが、わたしは言わないでいた。
蒼真と話すたびに、苦しくなった。
上手くいく見込みのない恋。既にふたりが両想いだとわかっていて、この先に何を期待しろと言うのか。未来は確かにわからないものだけど、だからって諦めないなんてただ辛いだけだと思う。
それから時間は流れていって、だんだんと肌寒くなってきたから、部活時間に自然とプールサイドに目を向けると、もう人影がなくなっていた。
来年の初夏まで、泳ぐ姿は見えないんだな。
そんなことにまた少し凹んで、そんな自分に気づいてやめようとして、また考えて。
ほんとどうしようもないなあ。
"好き"って、どうしてこんなにも止めどなく溢れるんだろうな。
「......はあ」
誰にも聞かれぬように、溜息をついた。
この頃にはもう、陽翔との距離の空け方はばっちりで、近すぎず、遠すぎず、そんな中間の距離感をずっと保っていた。ただし、帰るときは一緒になるから、今もずっと乗せてもらっている。そこはもうわたしの特等席のようなものとなっていた。
薄暗く秋風の冷たい外で息を吐き出せば、それは白くなっていた。