オレンジの片想い
チャイムが鳴りそうになって、わたしはひなせちゃんと話すのをやめて、自分の席に戻った。
わたしの左右も前後も、あまり話したことのない人たち。席替えって、そんな人たちとも交流するためにあるんだと思うけれど、やっぱりそうはいかないものだ。
わたしが席に着いたのと同じくらいに、ノートを写し終えた蒼真が、急いでノートを手渡しにきた。
別にそんなに急がなくてもいいのに、なんて思っていると、隣の人が英語の教科書を机上に出しているのを見て、次の時間が英語だと知る。
「ギリセーフだね」
「おう。最後の方だいぶと字が荒いけどな」
はは、と笑いながら、ノートをわたしに渡す。
「やっぱ雪葉のノート見やすいな」
「そう?それはありがとう」
「おう。助かった、ありがとな。....って、今回はちゃんと礼つきだからな」
そんな台詞を捨てて、蒼真は自分の席へと戻った。わたしは最初、その意味を理解できなかったんだけど、先生が来てノートを開いた瞬間に、それを理解した。
ノートの隅にまた、お礼の書かれた付箋が貼ってあったのだ。
...覚えて、たんだ。
さっき、言い逃げるように言ったのは、あの頃と変わらず恥ずかしかったのかな。
ほら、こんなことしてくるからさ、諦めがつかないんだよ。どうしてくれるんだよ。
また、好きになっちゃったじゃないか。